2012年05月16日

Medium 4614130500photo credit: Pink Sherbet Photography via photo pin cc
こんにちは。てんめい(@m_tenmei)です。
 
つい先日、下記の記事を読みました。

就職失敗で昨年150人自殺 30歳未満、07年比2倍超-主要│くまにちコム
 
本当に残念に感じました。
 
今僕は、天外司郎さんの著作『「生きる力」の強い子を育てる』を読んでいる最中です。

子どもの頃に「生きる力」を培うこと。その重要性と身につける術を、提唱されております。
 
まだ読んでいる途中ですが、共感する内容が多いので、読んだところまでの内容をご紹介したいと思います。

「生きる力」

天外伺朗さんは、ソニーに入社し、CDやAIBO(犬型ロボット)などの開発を主導し、チーム全体を「フロー」に入る「燃える集団」に仕立て上げた方です。ソニー上席常務を退任された現在は、「医療改革」と「教育改革」と「企業の経営改革」を起こすべく活動されております。
参考:フロー理論を学ぶVol.1 | tens-life
 
その天外さんが定義する「生きる力」とは

・自立心・ゆるがぬ信念
・自らを肯定する力
・自らを常に磨く力
・自己実現へ挑戦する力
・全体の中で適切で調和的な立ち位置を確保する力
・人生を楽しむ心
・創造力

などです。
 
これらの能力は、人間の進化の過程において、爬虫類時代までに発達した「古い脳」のはたらきがコアになっている力であり、人間が生きるうえで、土台となる能力です。
 
一方、理性・論理・知識などは、大脳新皮質のはたらきだけで完結している表面的な能力です。
 
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この本で天外さんは、「生きる力」をどうすれば強化できるか を掘り下げてくれています。

「与える」教育ではなく、「引き出す」教育を

現在に至る教育は、「与える」ことが中心です。道徳教育といえども、子どもたちの本質的な人間性の向上というよりは、「こうあるべき」という知識を与え、はみ出してはいけない枠を、上から強制しています。
 
まさに、知識や枠で押し固められた”鯛焼き”。

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与えられた枠を超えた成長は許されません。
個性は殺され、自ら考える値からはあまり育たず、独創的な子どもはつぶされてしまいます。
 

「引き出す」教育

『社会契約論』の著者であり、啓蒙思想家であった、ジャン=ジャック・ルソー(1712-1778 スイス)は、「与える」教育に代わり、「引き出す」教育を提唱しました。
 
知識や枠を外側から強制するのではなく、子どもたちが潜在的に持っているものを「引き出す」というところに、教育の基本を置いたのです
 
その背後には、
子どもは元来あらゆることに興味を示すので、強制しなくても、知識を吸収しようとする。また自らを律し、健全に成長しようとする力を、全ての子どもが内に秘めている。
という絶対的信頼がベースにあります。
 
適切な環境を用意し、たっぷりと愛情を注ぎ、自由を与えられれば、子どもは自然に伸び伸び成長するという発想です。
 
このルソーに始まる「引き出す」教育の流れを、「人間性教育学」と、天外さんは名付けています。
 
人間性教育学」の心髄は、「引き出す」教育の系譜の一人、アレクサンダー・サザーランド・ニイル(1883-1973 イギリス)のことばで表現されています。

全ての子どもは、自分自身の中に神を持っている。
自我が満たされた自由な子どもはその神を発揮する。
善悪や正邪の価値基準を与え、子どもを型にはめようとすると、その内にある神を悪魔に変えてしまう。
つまり、法律や規則でしばり、道徳で抑え込もうとするから、罪を作り、反逆者を作り出すのだ。
P58

文字や計算の早期教育は不要

天外さんは「子どもたちに早くから文字や計算を教えることは、百害あって一理なし」と言っています。
 
それは、発達心理学という新しい学問を開拓したスイスの心理学者、ジャン・ピアジェ(1890-1970)の発見によります。

論理操作が本格的に発達するのは、だいたい12歳以降(個人差が大きい)の形式操作期と呼ばれる時期(それ以前も、芽としては存在する)。
 
人間は、生まれた直後の感覚運動期、1歳半~7歳の前操作期、7歳~12際の具体操作期などと呼ばれる発達のプロセスの中で、それぞれの時期にふさわしい能力を、ひとつひとつレンガを積むようにきちっと獲得するのが自然。
 
子どもたちは、まるで35億年に及ぶ生物の進化の歴史をなぞるように、古い脳の能力を発達させた後に、新皮質が担当する能力を発達させるのが自然な姿である。
P61

 
日本の公教育では、小学校からペーパーテストが実施されます。ペーパーテストは知識を記憶したかどうかと、論理操作の能力を問うものです。すなわち、大脳新皮質(ピラミッドの上側)の能力を問うものです。
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子どもたちに早くから文字や計算を教えることは、百害あって一理なしだ。
本当は12才を過ぎるまで、一切のペーパーテストにさらさないほうがよい。古い脳は身体性や情動に直結しており、そららを鍛える事は「生きる力」に直結している。
P62

 
土台の出来ていないうちに、新皮質の教育を教え込むと、バランスが悪く、「生きる力」の弱い子が育ってしまいます。
 

サドベリー

いまの「与える」日本の教育と正反対にあるのが、ダニエル・グリーンバーグが提唱したサドベリー流の教育です。
 
サドベリーでは、テストはおろか、授業そのものがありません。子どもたちには徹底的に「遊ぶ」ことが奨励されており、自ら進んで何かを学びたいと決心した時だけ、先生と交渉して授業を企画することが出来ます。
 
当然ながら、ほとんどの子が遊び回っていてます。毎日学校に行っては、釣りばかりして何年も過ごす子もいます。
 

徹底的に遊びつくして満足した子は、必ず学習意欲が高まるときが来る。そのときに、自ら授業を企画して学ぶと、通常の数十倍の効率で学習するという。つまり、クラスで座って勉強する時間は、ほんのわずかでいいというのだ。
 
サドベリー校では、4歳から19歳の子どもを受け入れている。設立から40年を超えるが、いままでひとりの例外もなく、15歳になれば完璧に読み書きをこなすようになってきた。しかも早くから読み書きができた子と遅くまで覚えなかった子とでは、まったく差はないという。
 
いま日本では、母親たちが必至になって就学前から文字を教え、知識を教えようとしている。それはまったく無駄なだけでなく、文字を強制的に覚えさせられたがために、子どもが失ったものの大きさを思うべきなのだ。
 
(中略)
 
グリーンバーグにいわせると、サドベリー校の卒業生は、たとえ入学の受付期限が過ぎてから申し込んでも、大学当局と強引に交渉して入学を許可させていまうような子が多いという。おそらく、交渉の過程で、大学側がその子に惚れ込んでしまい、ルールを曲げてでも入学させた方がいい、と判断するだろう。
 
そこまでの「人間的魅力」「積極性、行動力」「バイタリティー」「交渉力」「自己肯定感」などが育っていれば、どんな状況になっても怖くはない。その子がいい人生を歩んでいくのは間違いない。
 
これが本当の意味での「生きる力」だ!

P65-66

 
アメリカではこの破天荒なサドベリー教育が公教育として認められていて、政府からの補助金が支給されています。
 
日本ではもちろん公教育として認められていません。卒業しても何の資格も得られませんが、すでに5校は開校しているようです。
前述のニイルの教育学を公教育に取り込んでいるフリースクールも、10校以上はあります。
 
日本の国の体制とはまったく別に、「人間性教育学」を実践している方々がいるんですね。
 

おわり

現在まで読んだのが全21章のうち、第7章までです。

1章 エリートシステムの崩壊
2章 なぜ「ゆとり教育」は失敗したのか
3章 「生きる力」を失った日本人
4章 世界一教育規制の厳しい国、日本
5章 お国のための教育
6章 「与える」きょういくではなく「引き出す」教育を
7章 文字や計算の早期教育は不要
8章 「フロー」体験のすすめ
9章 千住家の教育白書
10章 家庭内保育の落とし穴
11章 子どもの根源的な傷を癒す
12章 育児の常識は間違いだらけ
13章 「しつけ」は子どもへの不信の裏返し
14章 無意識に巣くうモンスターたち
15章 子どもたちの中に「神」を見出す
16章 「お勉強」では健全な知能は発達しない
17章 顔から手や足がでてる絵は健全にそだっている証拠
18章 教えると発達が止まる!
19章 奇跡の保育
20章 ブロックを取り除く
21章 内なる野性を呼び覚ます

 
第8章以降もとても楽しみです。
 
この本には、生きる力の強い子を育てる「人間性教育学」の素晴らしい教育理念を、日本の親たちに知ってほしい・目覚めて欲しいという、天外さんの強い願いが込められています。
子どもを伸び伸び・たくましく育てたいと思っている、そんな皆様におすすめです。
 


2012年5月16日
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